会社について

代表インタビュー

障がい者でも日々を豊かに暮らすことができる社会をつくるため、障がい者ヘルパーを事業を展開する株式会社ビーンズ。その代表取締役をつとめる坂野拓海(さかの・たくみ)がビーンズとともに描く未来図とは?

障がい者とコミュニケーションできる人材を生み出す

 私は、かつて経営コンサルタントとして働いていました。その後、「もっと密に個人と向き合う仕事がしたい」という思いから退職し、障がい者専門の就職支援会社に入社。 それが、障がいを持つ方々との出会いでした。しかし、そこで直面したのは、社会には障がいを持つ人たちの仕事探しにはまだまだたくさんの壁があるということ。 度々出会ったのは、軽い障害の人が求める事が多く、分かりづらい、見えづらいなど、どうコミュニケーションをとればいいかわかりづらい人は敬遠される傾向がありました。 人事担当者にとっては、コスト、トラブル、責任、などのリスクを回避する考えが先に立ち、障がいについていっこうに理解されず、就職に壁ができてしまうことがあります。

 当時、僕が勤めていた会社が掲げられた理念は、「障がい者雇用における問題を解決すること」であり、僕自身、その理念にとても共感していました。 しかし、就職を希望する全ての障がい者の人ではなく身体障害者などの目に見える一部の人だけが就職に有利で、知能や精神障がい、難病等の目に見えづらい障がいの人の就職が困難であり、その課題をクリアできるようなサービスはまだまだ不足していました。 そして、僕自身が本当に解決したいのは、この核の部分なのだと気づきました。 そして、就職支援会社で経験を重ねた後、株式会社ビーンズを設立しました。 ビーンズが展開するのは、時間のある若者や社会人とひとりでおでかけできない障がい者の方とをマッチングすることで、一緒に遊びに行きながらコミュニケーションを学ぶ、そして同時にそれがアルバイトになるという新しい場づくりです。 遊ぶことが仕事になるというのは、とても珍しいアルバイトかもしれません。 しかし、そうすることで、ひとりでも多くの人が障がい者と関わる場を創りたくて、僕はビーンズを立ち上げたのです。

 現在、日本の約12人にひとりが障がいを持っています。 これから高齢化が進めば、その比率は更に高まるでしょう。 30年もすれば、社会のあちこちに大きな問題が現れるはずです。 その前に、「障がい者ヘルパー」という仕事の場を通じて、世の中に、障がい者とコミュニケーションをとることができる人材を増やしたいと考えています。 障がい者と関わった事がない一般の人たちにこそ、障がい者と関わる経験を提供したいのです。

本当の「豊かさ」のある暮らしとはなにかを考える

 僕は、障がい者でも楽しく豊かに暮らすことができる社会をつくりたいと思っています。 しかし、「豊かさ」とは何なのでしょうか? 経済的に恵まれることでしょうか? それではなぜ、恵まれているはずの日本で、未だたくさんの人が心に十分な「豊かさ」を感じながら穏やかに暮らすことができないのでしょうか?

 僕が考える「豊かさを構成するもの」とは、食、学び、遊び、出会い、などの自由です。 これは、僕自身が、旅の体験などを通じて実感したこと。 たとえ遠くに旅に行かなくても、図書館に行くことができれば大きな「豊かさ」を得ることができます。 なぜなら、そこには楽しみがあり、学びがあり、新しい世界との出会いがあるから。 豊かさとはそんな小さな「自由」から生まれることなのです。 ヘルパーは、移動支援を通じて、そういった豊かさを障がいを持つ人にも届けていくことができるのです。

すべての課題解決に繋がるのは、「知らない」を変えること

 例えば、先に挙げたような、聞き慣れない障がいや簡単には説明しにくい障がいを持つ方は仕事が決まりづらいという問題。 この問題を生み出しているのは、障がいについて「知らない」という現実です。知らないと、受け入れる人もトラブルなどを恐れてしまうのでしょう。 同じことは、多くの人に言えると思います。 日常で障がい者に出会った時、知識がないからどう接すれば良いのかわからない。 それゆえ、距離ができてしまうという具合です。 例えば、もっと単純に、『この人を、どんな遊びに誘ったら、一緒に遊べるかな』というふうに、相手のことを知ろうとするだけですごく変わるはず。 相手のことを知ろうとすることで、たくさんのことが変わるはずです。

 だから、ビーンズでは、利用者さんのことをよく知るということを大切にしています。 ヘルパーは、「○○さんは、音楽が好きだよね」「○○君は、おもしろいよね」「○○ちゃんは、○○が素敵だよね」というふうに、利用者さまそれぞれとの出会いを楽しむ、その個性に親しみながら働いています。 障がい者だからじゃなく、とにかく相手を知ろうとすること。 それが大事なんです。

 世の中には、いじめから紛争まで、たくさんの問題があります。 しかし、その多くの原因も「知らない」ということだと、僕は考えています。 だからこそ、人の認識を変えていくことこそが、すべての課題解決に通じると考え、解決のきっかけをつくる役割を担いたいのです。

全国に広がるリーダーを育てていく

 ビーンズが取り組みたいのは、障がい者と楽しみながらコミュニケーションを取ることができる人を育てるということ。 雇用を増やすではなく、移動支援を通じて、障がい者とコミュニケーションをとることができる人を増やしていくことにあると考えています。 移動支援に関わり、経験を経た人をたくさん生み出し、社会に送り込んでいきたいと考え、事実、そういう人材がすでに生まれはじめています。

 若者には、どんどん移動支援の現場に参加してほしい。 移動支援の経験は、自分の暮らしを支えるためのアルバイトにもなり、大きな社会勉強にもなる。 そして、その体験のなかで自らも存分に新しい出会いを楽しんでほしい。 そのために私が重点を置き、取り組んでいるのは、ヘルパーが楽しめる仕事づくり。 若者たちが楽しんで参加できる形をつくっていく必要性の大きさを感じます。 ヘルパーも、利用者も、家族もみんなで楽しめる形。 そこにいる人たちが幸せを感じられる循環をつくっていきたいと思います。

 そして、本当の意味で社会を変えるために、その仕組みを東京だけでなく全国につくっていきたい。 その仕組みを全国に広げ、各都道府県に100人、全国で約5000人のヘルパーを生み出すこと。それが、現在の僕の目標です。

株式会社ビーンズは、単なるハードや制度を整えただけの社会ではなく、
1人ひとりの心がバリアフリーでいられる社会をつくるため、
これからも挑戦し続けていきます。